「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策  今井 むつみ

2026/03/15

「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 今井 むつみ

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「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策
「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 

1. コミュニケーションの本質と「スキーマ」の壁

伝えたいことがうまく伝わらない根本的な原因は、**「言葉は意図のすべてをそのまま表現できるわけではない」**という事実にあります。言葉は常に受け取り手によって「解釈」されて初めて意味を持ちますが、その解釈が話し手の思いと一致しているかは誰にも分かりません。

人にはそれぞれ、学びや経験、環境、興味関心によって形作られた知識の枠組みである**「スキーマ」**が存在します。

フィルターとしての役割: あらゆる話は自分自身のスキーマというフィルターを通して理解されるため、スキーマはいわば**「思い込みの塊」**でもあります。

前提の違い: 「あなたと私のスキーマは違う」ということを前提にしない限り、スムーズなコミュニケーションは望めません。相手を思い通りに動かそうとするのではなく、相手が何を大切にしているかを考えることが真のコミュニケーションへの道です。

2. 認知の歪みと記憶のあやふやさ

人間は、自分にとって都合の良い情報だけを無意識にピックアップし、それがすべてだと思い込む傾向があります。

認知バイアス:

過剰一般化: 一部の情報が全体を代表していると思い込む。

エコチェンバー現象: SNSなどで似た意見ばかりに触れ、自分の思い込みを強化する。

流暢性バイアス: スラスラと分かりやすく話されると、その内容を信じやすくなってしまう。

記憶の変容: 記憶は曖昧で、願望や感情、スキーマによって容易にすり替えられたり操作されたりします。嘘をつくつもりがなくても、本人が「事実」だと思っていることが正しいとは限りません。

3. 思考に影響を与える「感情」と「具体・抽象」

感情による判断: 人間はまず感情(好き嫌い)で物事を判断し、その後に論理的な理由を後付けしています。感情の影響を受けずに判断できる人間は存在しません。

情報の圧縮(抽象化): 言葉は情報を圧縮するためのツールです。具体的にすれば分かりやすくなりますが、情報量が増えて脳に負担がかかります。そのため、人は抽象化することで脳の負荷を下げて全体を捉えています。この具体と抽象の往復をコントロールすることが、必要な情報を記憶するために不可欠です。

4. 「達人」の直感とAI時代に求められる能力

一流の人が持つ優れた直感は、天から降ってくるものではなく、絶え間ない自己研鑽の結果です。達人の直感の正体: メタ認知を働かせて自分の課題を分析し、長期間の集中した訓練を行うことで、知識が身体化し、考えなくても頭と体が連動するようになります。この究極のスキーマを**「大局観」**と呼びます。

生成AIとの向き合い方: 生成AIは便利ですが、そのプロセスは人間とは全く異なるため、AIの回答に接しているだけでは「生きた知識」や「直感」は身につきません。

人間にしかできない能力: AIが進歩する中で私たちに求められるのは、AIには代替できない**「生きた知識」や「直感(大局観)」を磨くこと**です。

 

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